「劣後比率がとりあえず高ければOK」と思っていませんか?
もちろん間違ってはいません。
ただ、業者が提示する劣後比率を鵜呑みにしていると思わぬリスクを背負うことにもなりかねません。
そこで今回は、初心者向けにあえて業者が書かない優先劣後方式の仕組みについて解説しました!
それでは、結論からいきます!
劣後比率が高くても銀行ローンがあると安全とは限らない
この解説で言いたいことは、「劣後比率が高くても銀行ローンがあると安全とは限らない」ということだけです。
不動産取得額の一部を銀行ローンの借入で補填しているファンド、たまにありますよね。
そのようなファンドでは、たとえ劣後比率が40%だったとしても、40%の損失リスクから投資家が守られている訳ではありません。
(この場合の劣後比率とは、匿名組合出資分の内の劣後出資の割合を指します)
なぜなら、損失額の補填は次の順番で行われるからです。
- 劣後出資金(事業者)
- 優先出資金(投資家)
- 銀行ローン
※銀行は融資の際に担保設定しているため、銀行ローンから直接補填する訳ではありませんがここでは割愛します
では、詳しく解説します
そもそも優先劣後方式とは何か?
不動産クラウドファンディングにおける優先劣後方式とは、投資家の損失リスクを抑えるための仕組みです。
優先劣後方式では、優先出資者である私たち「投資家」と劣後出資者である「事業者」の出資金を分けて扱います。
ファンドでは、不動産運用により賃料収入や売却益を得て、それらを原資として配当が分配されます。
ただし、投資である以上は、運用終了時に損失が生じる可能性は必ずあります。
損失が生じた場合、優先劣後方式では次の順で損失を補填します。
- 劣後出資金(事業者)
- 優先出資金(投資家)
そのため、損失額が劣後出資金よりも小さい場合は、優先出資金は棄損することなく投資家の出資金(元本)は守られるという訳です。
もちろん、損失額が大きく劣後出資金で賄えない場合は優先出資金から補填せざるを得ません。
その場合は、投資家の出資金(元本)は棄損することにはなりますが、一定比率までの損失リスクを抑えることができる方式であることは間違いありません。
投資かにはありがたい仕組みです
一般的な優先劣後方式の仕組み
それでは、絵で確認してみましょう。
よく見る絵ですよね。
この例ですと、物件取得額1億円を次の比率で出資しています。
- 劣後出資金:4千万円
- 優先出資金:6千万円
このファンドの劣後比率は「40%」です。
運用終了時に出資総額30%の損失(3千万円)が出たとしても、全て劣後出資金から補填されることとなり、投資家の優先出資金が棄損することはありません。
分配金は減るけどね
銀行ローンがある場合の優先劣後方式の仕組み
次に、銀行ローンがある場合で確認してみましょう。
この例ですと、物件取得額1億円を次の比率で出資しています。
- 劣後出資金:2千万円
- 優先出資金:3千万円
- 銀行ローン:5千万円
このファンドの劣後比率は「40%」です。
匿名組合出資金(優先出資金+劣後出資金)5千万円の内、劣後出資金が2千万円ですので、2千万円÷5千万円=40%です。
そうです、先ほどの銀行ローンがないケースと同じ劣後比率ですね。
物件取得額に対する劣後出資金の割合は当然20%ですが、事業者によっては特に説明もなく劣後比率40%と表記している場合があるのです。
『劣後比率40%だから、30%までに損失には耐えられる』
この考えが誤りであることは、もうお分かりでしょうか。
上記の絵の通り、運用終了時に出資総額30%の損失(3千万円)が出たとしたら、劣後出資金では不足しているため投資家の優先出資金から補填されることになります。
要は、元本棄損する、ということです。
銀行ローンの借入があるファンドに申し込む場合は、「どの程度の損失であれば投資家の出資金が守られるのか」を事業者が提示している情報だけではなく自分自身の手で計算することが重要です。
元本棄損だけは避けたいからね
最後に
いかがでしたでしょうか。
今回は、初心者向けに業者が書かない優先劣後方式について解説しました。
もし、銀行ローンの有無に関わらず劣後比率が高ければ高いほど安全だと、思っている方が考えを改める機会になったのなら嬉しいです。
念のためですが、事業者に投資家を欺く意思があるから気をつけろ、といった意図は全くありません。
通常の事業者は、必要な情報開示をしっかりと行っています。
投資家は、その情報を正しく理解して判断していくようにしましょう。
私もまだまだ勉強中です
他にも初心者がつまづきがちな基礎知識を解説しています。
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